銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 無言のまま、ズブ濡れの顔でジンがあたしを見た。

 その視線と沈黙が、正直ちょっと気まずいんだけど、でもこれだけは一応、ちゃんと確認しとかないと。

 あの……あの、ね? そもそもね?

「この雨、やっぱりあたしが降らせてるの?」

「お前以外の誰が降らせるんだ! 誰が!」

「だ、だってあたし、別に『雨よ降れ!』って雨乞いしたわけじゃないわよ?」

 あたしは、ただキレただけよ。

 キレて、頭にきて、体がガアーっと熱くなって、そしたら勝手に雨雲がゴロゴロと……。

「やっぱりお前だろうが!」

「そ、そんな事言われても、本当に意識なんてしてなかったんだってば!」

「精霊の力ってのは、本来そういうもんなんだよ! とにかく早く何とかしろ!」

「なんとかって言われても、無意識に降らせてる雨を止めるなんて無理よお! どうすりゃいいの!?」

 あたしは狼狽しながら周囲を見渡した。

 狂乱の槍のごとくに打ち付ける怒涛の雨量に、地面はもはや処理能力が追いつかない。

 地表に水が薄い膜のように張り、極浅の湖のようだ。

 ど、どうしよう。このままこの勢いでずっと雨が降り続けたら、いったいどうなってしまうの!?

 その先の展開を想像して、あたしは寒気がした。
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