銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 淡い緑色の芽が双葉になり、そしてその双葉の間から……。

―― ポポンッ!

「わー!? ち、ちっちゃい土の精霊がうまれた!?」

 人の親指ぐらいの大きさの土の精霊が、双葉の上に立ってこちらを眺めている。

 ふわふわの長い髪、くるりとまあるい大きな目、ふっくらした幼い頬は、完璧な土の精霊のミニチュア版だわ!

 か……可愛い!!

 あたしとジンが顔を寄せると、土の精霊は小首を傾げ、じぃっとこちらを見上げた。

 その健気で、いじらしい姿ときたら、かわいいかわいい! すごく可愛い!

「火ってのは破壊するだけじゃない。再生の象徴でもあるんだよ」

 ジンが微笑みながら説明してくれる。

「再生?」

「雫の世界でも、火から生まれるものがあるだろう?」

 火から生まれるもの?

 陶芸とかは、火が無いと生まれないわね。刀を鍛えるのにも火は不可欠だし。

 ちょっとズレてるかもしれないけど、料理だって火を使って食材を生まれ変わらせるし。

 火の鳥も再生を司る象徴だ。

「火の精霊は、最初からそのつもりだったのさ。この焼け野原も、きっとすぐに新芽で満たされるはずだ」

 そうか。火は命を生み出す力も持っているんだ。

 恐ろしい一面ばかりに目が向けられがちだけれど、そうじゃない面も確かにあったんだわ。

 あたしは激情にかられて、良く知りもせず、偏った見方しかしなかった。
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