銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしは、そんなふたりの様子を見ながら、つくづく反省していた。

 火の精霊の置かれている立場。土の精霊の置かれている立場。

 ふたりはそれをお互い良く理解し、できる限りの尊重をしている。

 本当に、あたしは勝手な暴走をしてしまっていたんだわ。取り返しのつかない過ちを犯さなくて心底良かったと思う。

 深い反省と共に、あたしは緊張しつつ火の精霊に話しかけた。

「火の精霊。あの、申し訳ありませんでした」

 火の精霊が、少し驚いたようにこちらを振り向いた。

「何を謝罪している?」

「その、あたし、あなたを傷つけてしまったから」

「傷つけた?」

「あ、いや、傷付けるってレベルを遥かに通り越しちゃったけど」

 ちゃんと謝りたい。思い込みひとつで、あたしは命を奪いかけてしまったんだもの。

 そりゃ最初から明確な殺意があったわけじゃないし、水の力が暴走してしまった事が、理由のひとつではあるけれど。

 だからって、『だってわざとじゃないも~ん』で済まされる問題でもない。

「水の力のせいにできないわ。自分自身が、しでかした事実だもの」

「水の力のせい? 自分自身?」

「ええ。あたしがした事なら、それはあたしの意思だわ。言い訳なんかできない」

「意思……言い訳……」

「ゴメンで済めば警察はいらないけど、まずはきちんと謝罪させて下さい」

 あたしは深く腰を折り、火の精霊に頭を下げた。

 火の精霊は、なんだか考え込むようにしてあたしを見ている。

 真紅の両目が、あたしを通り越して何か別の物を見ているようだった。

「まあ何にせよ、全員揃って無事で良かったって事だな」

「はい。本当によかったですっ」

 ジンと土の精霊が、場をとりなす様に明るい声を出した。
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