銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 その異星人さんも、あたしと同様にすごく驚いた様子で、あたしのことを頭のてっぺんから足元までまじまじと凝視している。

 おっかなびっくりなその態度からして、とりあえず、いきなり襲われる心配はなさそうだけど……。

 なに?
 あたしって、そんな奇怪な生物に見えるのかしら?

 あ、この会社の制服がマズかった?
 うーん、たしかにギリシャ神話の衣装みたいな服とは、かなり文化が違うかも。

 どうしよう。警戒して敵対心をもたれたりしたら、まずいわ。

 困惑しながら色々と思考を巡らせていると、ついに異星人さんが、弱々しくも可憐な声であたしに話しかけてきた。

「なんという事でしょう。あなたは……」
「え!?」

 な、なに? あたしが何?
 何をそんなに驚いているの?

 大丈夫よ! 変な服を着てても、あたしは人畜無害な存在だから!
 だからお願い、突然襲ってきたりしないで!

「あぁ、あなたは……あなたは……」

 華奢な指で自分の両頬を覆いながら、彼女はその言葉を繰り返すのみ。

 だ、だから、あたしが何!?

 そんなにこの制服がNGだった!?
 専務の好みで無理やり決定した制服だから、たしかに社員全員、えらく評判が悪かったんだけど!

 ……ていうか、異星人にまで拒否されるのか。専務のセンスって。

「あなたは……」

「は、はい!?」

「もしかして……」

「はい!?」

「人間ですね?」

「……そうです、けど」

「ああ!やっぱり!」

 ひどく狼狽している彼女を、あたしは気抜けしながら見た。
 まさかそんな問い掛けがくるとは予想してなかった。

 そんな基本的な事実で驚かれても、こっちが困るんですが……。
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