銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしが人間だと、何か困る事情でもあるのかしら。
 よし、こうなったら思い切って……!

 あたしは意を決して、彼女との対話を試みることにした。

 だってお互い困ってるみたいだし、だったら協力し合えば打開できるかもしれない。

 映画に出てくる怖いモンスタータイプの異星人じゃなさそうだし、きっと話せば通じるはずよ。

 非常事態では、独りで悩むよりも互助する姿勢が大事。

 なんだっけ? 三人寄れば文殊の知恵? 毛利元就三本の矢? ひとり足りないけど。

 あ、異星人にも通用するかしら。この格言。

「あ、あのう……」

 心臓をバクバク鳴らしながら、あたしは恐る恐る話し掛けた。

 彼女がこちらに振り向くと、長い長い髪が光を反射してキラキラ青く輝く。
 本当に、吸い込まれそうな綺麗な青色だ。

「はい? なんでしょうか?」
「あのう、ここってどこだか分かりますか?」

 とりあえず、一番に聞きたいことをまず質問した。

 そりゃ、知らない土地の地名を聞いてもどうにもならないけど、ここがどこだか分からないよりはよほどいい。

 とにかく知りたいの。なんでもいいから知りたいの。

「ここですか? ここは……」
「ここは?」
「砂漠の地です」
「……」

 あのね。
 見りゃ分かるわよそりゃ。

 誰もここが湿原地帯だなんて思わないわよ。
 だからねぇ、そういう事が聞きたいんじゃないの。

「いやだから、そうじゃなくて……」
「ここは砂漠の神の住まう神殿の近くです」
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