銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 信頼? 友情?
 ……。

 恋情?

 分からない。自分の気持ちが分からない。

 ただの仲間意識なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。

 自分の中の答えさえ定まらないのに、ジンの心の内なんて、ますます分からない。

 彼があたしに向けてくれる、このひたむきな感情はなんなのだろう?

 やっぱり友情? 責任感? それとも……?

 精霊が人間に対して、そんな感情を持つものなの?

 その問いばかりが、頭の中を堂々巡りする。

 そして答えは闇の中。今のあたし達のように、闇に包まれるだけ。

 ほんのわずかに触れ合う指先のように、かすかな何かを感じながら、ただ、闇に包まれ探し求めるだけなの。

 降る様な満天の星空。

 何も語らない、美しい銀色。

 あたしも無言のまま、ただ心に誓い続ける。

 きっと帰るわ。ジン。あなたの元へ帰ってくる。

 あたしが、それを望んでやまないから。

 更けていく夜の中で、あたし達はいつまでも、もどかしく見つめ合い続けていた……。

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