銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「命にかかわる状況になった際、勇猛に戦うべし」

「わかっています」

「お前は本来、人を傷つけるのは嫌だろうが遠慮は一切無用だ」

「はい」

「自分と雫の命を、まず最優先にするべし!」

「雫を守れ! 生きて帰って来い! 頼んだぞ!」

「だいじょうぶです。全力でたたかって守ります!」

 ……きっと大丈夫大丈夫大丈夫ぅ~。

 もう、両手をこすり合わせて、念仏みたいに繰り返すしかない。

 最悪の状況ってケースは、頭から除外しよう。

 ネガティブ思考に、タチの悪い低級霊とかが寄り付いてくるかもしれないし。

 イワシの頭も信心からよ。このさい神頼みでもなんでも……。

「雫、頼みます! どうか頼みます! どうか!」

 泣きそうなモネグロスが、あたしの両手を握り締める。

 か、神頼みする前に、せっぱ詰った神様から頼ま込まれてしまった……。

 あたし、受験の時も入社試験の時も、左足から歩き出して合格したのよね!

 よぉし今回もそれで行こう! ゲンをかつぐってヤツ!

 かついで得になるもんなら、ゲンだろうがタンスだろうが、何だってかついでやるわ!

 だから絶対に大丈夫に決まってるわよ!!

 と、半ばヤケクソ気味に心の中で叫んでいると、ジンが隣にやってきて熱心に話しかける。

「雫、分かっているな? くれぐれも無理は……」

「しないわ。分かってる」

「危険を感じたら……」

「考える前に逃げる、でしょ?」

「無事に帰ってくると、もう一度ここで約束してくれ」

「ええ、約束する。きっと無事に帰ってくるから」
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