銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「…………」
「……あの……?」
「あ! ごめんなさいジロジロ見ちゃって!」

 い、いけないいけない! 初対面の相手に向かって大変失礼なことをしてしまった!
 気分を害していないといいけど。

「本当にごめんなさい。あたしの世界では、精霊って存在してないものだから珍しくて」

「……え?」

「あ、いや。存在しないって断言していいのかどうか分からないけど。でも少なくとも、普通にバス亭みたいにあちこちに立ってるわけじゃないから」

「……精霊が、存在しない……?」

 水の精霊は、ひどく訝しげにあたしの顔をじっと見つめている。

 どうやらあたしの言葉を良く理解できてない様子だ。

 ……そうか。こっちの世界では精霊が存在しないなんて、それこそ有りえないことなんだ。

 ところ変われば、社会の常識って全く通用しなくなるものなのね。

「あなたは、何処からいらしたのですか?」
「え? え、えっとぉ……」

 水の精霊に不思議そうに問いかけられて、今度はあたしが困惑する。

 うーん、どう説明すれば、この異常事態を理解してもらえるだろうか。

「あの、日本、です」
「にホん?」
「いえ、あの……ち、地球って知ってます?」
「チキュー?」
「いや、えーっと……」

 だめだ。この発音から察するに、完全に通じてないわ。精霊さんに。
 困ったな。

「あなたは、森の人間の国から来たのではないのですか?」
「森の人間の国?」
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