銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 宴の広間からだいぶ離れると、また光の射さない薄暗い空間になる。

 アーチ型の天上やたくさんの円柱や、ゴツゴツした石造りの構造は、どこか砂漠の神殿を連想させた。

 でも豪華さは、あの神殿の足元にも及ばない。

 砂漠の神殿は、崩れかけていてもあれだけ素晴らしい装飾に満ちていたのに、この城は素材や造りそのものからして本当に簡素だ。

 でも……。

 あたしは闇に慣れてきた目で、周りの様子をしみじみ眺める。

 飾り台も、その上に置かれている壺も、どれもこれも黄金の光沢を放ち、堂々とした存在感に溢れている。

 壁に掛けられている絵の額縁にすら、たくさんの金銀が使用されている。

 美術品の価値なんてまったく分からないけれど、相当高級な品だって事は素人目にも分かった。

 なんなのかしら? 城に入った時から感じているこの違和感。

 そう、アンバランス。

 お仕着せの、分不相応な贅沢感。

 馴染みの無い高級品を突然手に入れて、戸惑っているような……言葉は悪いけど、浮かれた成金趣味みたいな。

 王の圧政にビクついて、萎縮しながら生活してるのかと思ってたけど、狂王に媚びへつらっている連中が国民から搾取してるのかもしれないわ。

 ますます気に食わない王様ね。

「しずくさん」

 ずっとひと言も話さなかったノームが初めて話しかけてきた。

「なに? ノーム」

「アグアの気配、かんじとれますか?」

 あたしはグルリと周囲を見渡す。アグアさんの気配、と言われても……。
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