銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 蔓はあっという間に力無く萎んで、床に落ちる。

 狂王の右手にしっかりと握られた長い刀身の剣が、暗闇の中で白く輝いた。

「うぅ……」

 ノームの、苦痛混じりの息を呑む音が聞こえる。

 狂王は冷淡な声で、あたしの胸元のノームに向かって話しかけた。

「お前は、土の精霊か?」

 その問いに、ノームの全身がビクンと震えた。

「貴様、精霊の長の命に背き、裏切ったな?」

「あ……」

「制裁を与える。覚悟して受けよ」

 狂王は刀身に軽く左手を添え、肩を引き、しっかりと身構えながらあたしに声をかける。

「そこの女、動くな。わずかでも動けば、お前の胸ごと精霊を貫く事になる。お前は殺したくはない。用があるのでな」

「つ、貫くって何よ! 何するつもり!? ノームを殺すつもりなの!? 冗談じゃな……!」

「動くな、と言っている。言葉が通じないか?」

 冷静な目がノームを捕捉し、距離を測ると共に、剣を握る狂王の手に力が込められていく。

 ノームは、音が聞こえるほどにガタガタと震え怯えていた。

 あたしも、狂王の目に捕まえられてしまったように、恐怖でまったく動く事ができない。

 どう、しよう! このままじゃノームが!
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