銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 見たいなら見れば? 笑いたいなら笑えばいいわ。

 あんた達がどんな態度をとったところで、あたしは顔を伏せるつもりはさらさら無いから。

 どうぞご勝手にってなもんよ。ふんっ!

 頭に血がのぼったせいで、気弱になってた心が少しだけ奮い立つ。

 本当は、不安も泣きたい気持ちも満載だけど、情け無い態度を見せて見下げられるのだけはゴメンだわ。

 あたしは、モネグロスやジン達の仲間なんだもの。

 あの誇り高く勇気に満ちた仲間達に相応しい態度をとり続けたい。

 彼らが後で恥をかくような振る舞いをしたくない。

 狂王が呼んでいる?

 上等よ、丁度良いわ。理由を聞かせてもらおうじゃないの。

 あたしに会いたがってるって理由をね。

 これでほんとに『珍しいからハーレムに』なんて理由だったら、ただじゃおかないから!

 やがて通路の行き止まりに、大きな扉が見えてきた。

 木材と鉄の組み合わせの、幅広で頑丈そうな扉にはレリーフが掘り込まれ、取っ手にも豪勢な装飾がなされている。

 両脇に立っている兵士が両開きに扉を開ると、壁際の金の燭台や、何枚もの肖像画が目に飛び込んできた。

 大小様々な色鮮やかな壺。巨大な彫刻の像なんかの高価そうな置物がズラリと並べ立てられ、カーテンらしき真紅の布が、華やかに部屋全体を彩っている。

 その正面の最奥に、狂王が座っていた。

 一段高い場所。玉座に。

 彼はこちらをじっと見つめながら、あたしを待っていた。
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