銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 真っ白な長い長い髪は、腰に届くほど。同じく真っ白な、味も素っ気もない長い裾の衣装。

 顔中に刻まれた無数の深いシワと、袖から覗く痩せた手もシワだらけ。

 相当の御高齢だわ。誰かしら? こんなご老人が、国王のこんな近くに?

 あ、ひょっとしていわゆる『爺や』とか?

あたしの視線に気付いたヴァニスが口を開いた。

「この者は精霊の長だ」
「長!?」

 この人が話に聞いた精霊の長!? 狂王の腰ぎんちゃくの!?

「ね、ねぇノームは!? ノームはどうなったの!?」

 あたしは慌てて長に向かって叫んだ。

「あの子は今どうしてるの!? 無事なの!?」

 長が緩慢な動作で顔を上げ、灰白色の瞳であたしをジッと見る。

 白内障かしら? まぁ大変、だったらかなり症状が進行して……

 いや、そんな事はどうでもいいこの際!

「ノームに酷い仕打ちをしたりしてないでしょうね!?」

「……のーむ?」

「土の精霊に、この女が名を贈ったらしいぞ」

「ほう? 名を?」

「うむ。この女は、余から土の精霊を庇おうとしていたのだ」

「さようでござりまするか」

 のん気に会話してるヴァニスと長にイライラする。

 いいから早く答えてよ!

「あんな幼女に何かしたら、あんた達ふたり揃ってサイコパスよ!」

言い訳無用! 恥知らずな変質者よ!
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