銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「サイコパス? それは何だ?」

 ヴァニスが興味深げに身を乗り出して聞いてくる。

「反社会性パーソナリティ障害者! つまりあんたのことよ!」

「なるほど。国政を司る者の事か」

「違う!」

「ふむ。そちらの世界は色々と興味深い」

「ノームはどうなったの!? ノームは!?」

 あんたの興味も趣味も知ったこっちゃないわよ!

「無事だ。今はな」

 背もたれに深く腰掛けてヴァニスが答える。

「今は? 今はってどういう意味よ?」

「あの土の精霊は、すぐに処罰される事になっている」

「処……!?」

「裏切り者には制裁を与える。当然の報いだ」

 ヴァニスは自分の足元にうずくまる長に向かって、確認するように問いかけた。

「そうであろう? 長よ」

 長はしゃがれた声で、床に額を摩り付けるようにして答える。

「何も異存はござりませぬ。王のお望みのままに従いまする」

「な、なにそれ冗談じゃないわ!」

 このおじいちゃん、自分の部下の命が危ういってのに、立ち上がろうともしないの!?

 そりゃこれだけ高齢なら、立とうにも腰が立たないのかもしれないけど!

 あんまりよ! 仮にも長でしょ!? 知らん振りなんてヒドすぎるわ!

「ヴァニス王! ノームは悪くない! 何の罪もないわ!」

「反逆は大罪であろう」

「反逆なんかしてない!」

 ノームは、あの子はアグアさんを助けたいだけよ! そして自分の兄弟達を守りたいだけよ!

 無垢で優しい子なのよ!
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