銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 って真っ当な主張をしても、このサイコパスには通じそうも無い。

 いったいどうしたら……どうすれば……。

 あたしは、キッとヴァニスを睨んだ。

「反逆なんかしてない。それどころかノームはあなたにとても忠実よ」

「どういう意味だ?」

「あたしはノームに捕獲されて、この城へ連行されて来たの」

「……なんだと?」

「あなたが望んだんでしょ? あたしに会いたいって。そして長が命令したんでしょ? あたしを捕まえて城へ連行しろって」

「いかにも」

「ノームは長の命令を守り、王の望みを見事に叶えたの。立派な忠義者だわ」

 それのどこが反逆って言えるわけ?

 忠義者を罰したりしたら、他の者への示しがつかないわよね? さあ、どうするの?

「……」

 ヴァニスは顎に手をあて、何かを計算しているような目であたしを見ている。

「……ならばなぜ、余に襲い掛かってきた?」

「そりゃ暗くて見えなかったからでしょ。鳥目なのよあの子」

「精霊の鳥目など聞いた事も無いが?」

「聞いた事が無いのと、実際にいないのとは違うわ」

 ヴァニスは薄目になり、表情の読めない顔であたしを見た。

 あたしはその目を真正面から真剣に睨み返し、ばらくの間、あたし達は無言で睨みあう。

 そして、ヴァニスの唇が動いた。

「長よ、土の精霊への処罰を命ずる」
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