銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 突然こんな事態になってしまって、お年寄りには対処しきれなかったんだ。

 気の毒に。長も被害者なのね。

 同情しながら長の背中を見送るあたしに、ヴァニスが話しかけてきた。

「雫とやら。お前には聞きたいことが山ほどある」

 ……あたしに聞きたいこと? どうせあっちの世界の事でしょ?

 ふんっ、下世話な野次馬根性丸出しね。

「質問には全て速やかに返答せよ。これは命令だ。隠し立ては許さぬ」

 その尊大な態度とセリフが、ピリピリと神経に触る。

『これは命令だ』ですって? なんであたしがあなたの『命令』を聞かなきゃならないんですかね?

 ずいぶんと偉ぶった態度ですこと。王様なんだから現実に偉いんだろうけど。

 でもここの国民でもないあたしには、あんたの地位なんか関係ないのよ。

 ……って思考をたっぷり込めた視線をヴァニスへ向けた。

 ヘタに口に出したら不敬罪になりかねないけど、目で反論するだけなら文句言われる筋合いも無いわ。

「余はお前の望みを叶えた。お前がその返礼をするのは当然である」

 露骨に反抗的なあたしの視線に怒る様子もなくヴァニスは言葉を続ける。

「望み? 返礼? いったい何のことよ?」

「お前は、土の精霊の命乞いをしたであろう」

 ノームの処罰の件? なに言ってんの?

「あれはあなたの勘違いだったでしょう? だからあなたは処罰を軽減したんでしょう?」
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