銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 そうよ。あたしの見事な理屈に反論できずに、あんたは認めるしかなかったんでしょ?

 それをいかにも、自分の特別な計らいみたいなこと言って。

 やれやれ、これだからプライドの高い男は始末におえないのよ。

 自分の負けを素直に認める事ができないのよね。ああ、子どもっぽい自尊心。付き合ってられないわ。

 ……って思考のこもった視線を向けたら、ヴァニスの目が小バカにしたように薄目になった。

「お前、まさかあんな理屈が立派に通用したとでも思っているのか?」

「はあ?」

「土の精霊は鳥目でもなんでもない。確かに余を認識して襲ってきたのは明白だ」

 あーもーこれだわ。
 駄々っ子みたいに持論をごり押し。

「ヴァニス王、気持ちは分かりますけど……」

「忘れたのか?」

「はい? 何を?」

「あの時土の精霊が、余の名をはっきり叫んでいたのをだ」

「え?」

 名? 名って……。

 ……あ。

 そうだ。確かに叫んでた。

 それであたし、狂王の本名を初めて知ったんだったわ。

 あ~~……。

 勝ち誇った気分がみるみる萎んで、逆に気まずい気分がどんどん膨らんでいく。

「さあどうするか? 今度は何と言い逃れをするのだ?」

あたしの様子を見ながら、意地悪そうな声でヴァニスはたたみ掛けた。
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