銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 神の消滅という計画が順調な今、あたしは不確定要素なんだ。

 その不確定要素に、計画をひっくり返されるかもしれないと警戒しているのね?

 だからあたしを手元に置いて監視しておきたかったのね。

 この男、疑心悪気になってるんじゃないかしら。独裁者は常に不安に満ちていて、何も信用する事ができない心理状態だって聞いたことがある。

 なら、考えようによっては……これって有利よね?

 あたしの存在が不安だってことは、あたしはヴァニスの弱点に成り得るんじゃない?

 うまくすれば優位に立てるかも。

 何をどうしてどうすれば、『うまくする』になるのかは、まだ全然わかんないけど。

 でもここでバカ正直に、

『やだ考えすぎよ。あんたって心配性ねぇ』

 なんて励ましてやることは、ない。まったく。

 あえて心配してもらおう。がっつりと。

 そうして揺さぶりをかけるんだ。敵の足元は不安定にさせておくに限る。

 手持ちのカードが強いか弱いか、思わせぶりな態度で相手を翻弄するんだ。

「あたし、分からないわ。王が何を言っているのか」

 あたしは頭を振りながら答える。

「理由とか、必然とか、そんな難しいこと言われても分からない。あたし、何も知らないし分からないわ」

 しれ~っとした顔で、そう返答した。

 まあ実際、何も分からないのは事実だから、あたしの態度は真に迫っていると思う。
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