銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「私は今、ここで最期を迎えます。だから別の水の精霊の力が必要だったのです。仲間の精霊に、苛烈な砂漠を無事に越えてもらうために」
『自分はもう、死ぬのだ』という重苦しい事実を伝える水の精霊の口調は、意外なほど淡々としていて、態度も冷静だった。
伏し目がちで悲しげではあるけれど、悲壮感はまったくない。
だから余計にあたしは、その言葉をいまいち信じ切れないでいた。
だって自分の命が尽きるって時に、なんでこんなに落ち着いていられるの?
それってものすごく大変なことでしょう?
それとも、精霊と人間の命には差があるものなのかしら?
命が尽きるなんて、精霊にとってはたいしたことじゃないの? それに……。
「それで、何であたしが呼ばれたの?」
必要なのはあたしじゃなくて、水の精霊なんでしょう?
悪いけど、あたしが駆けつけたって役立たずよ完璧に。
あなたと一緒に乾物になるくらいしか出来ないわ。
「私の呼び掛けが、他の精霊には届かなかったようです。あるいは、届いてもここに来るだけの力が、もはや残っていないのか」
「精霊の力が残っていない? よく分かんないけど、精霊の力なんて御大層な物が、簡単に無くなったりするものなの?」
そんなあたしの疑問に、精霊は更に悲しげに答える。
「実はこの世界の神や精霊の力は、いまや風前の灯なのです。だから私の身も、この砂漠に耐えられなかった」
「なんでそんな事になったの?」
「全ては、森の国の狂王が原因なのです」
森の国の、狂王?
森の国って、人間の住む国のことよね?
じゃあ狂王って、人間の王様なの?
その王様、狂ってるの?
『自分はもう、死ぬのだ』という重苦しい事実を伝える水の精霊の口調は、意外なほど淡々としていて、態度も冷静だった。
伏し目がちで悲しげではあるけれど、悲壮感はまったくない。
だから余計にあたしは、その言葉をいまいち信じ切れないでいた。
だって自分の命が尽きるって時に、なんでこんなに落ち着いていられるの?
それってものすごく大変なことでしょう?
それとも、精霊と人間の命には差があるものなのかしら?
命が尽きるなんて、精霊にとってはたいしたことじゃないの? それに……。
「それで、何であたしが呼ばれたの?」
必要なのはあたしじゃなくて、水の精霊なんでしょう?
悪いけど、あたしが駆けつけたって役立たずよ完璧に。
あなたと一緒に乾物になるくらいしか出来ないわ。
「私の呼び掛けが、他の精霊には届かなかったようです。あるいは、届いてもここに来るだけの力が、もはや残っていないのか」
「精霊の力が残っていない? よく分かんないけど、精霊の力なんて御大層な物が、簡単に無くなったりするものなの?」
そんなあたしの疑問に、精霊は更に悲しげに答える。
「実はこの世界の神や精霊の力は、いまや風前の灯なのです。だから私の身も、この砂漠に耐えられなかった」
「なんでそんな事になったの?」
「全ては、森の国の狂王が原因なのです」
森の国の、狂王?
森の国って、人間の住む国のことよね?
じゃあ狂王って、人間の王様なの?
その王様、狂ってるの?