銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしは、馬と呼ばれた生き物を恐る恐る眺める。

 体格的には、あたしの持ってる知識の中の馬だわ。確かに。

 色は茶褐色で、足が長くて、たてがみもあって。
 でも……。

 なんで黒目部分が、横長なの?

 あれってヤギ科の特徴よね? 明らかに馬と違うわよね?

 しかも、なんで耳があんなにデカくて長いの?

 長すぎて、重力に逆らいきれずに垂れ下がってるじゃないの。

 どうみても50センチ以上の長さはあるわ。

 しかもツノまで生えてるし。ぐるんぐるんに渦巻いて、ぴんっと上に向かって伸びてるツノが。

 たてがみまでもが天パーみたいに、くるんくるん。

 しかも、一番疑問なのが……。

「なんで頭がふたつもあるの!?」

 しかも首が長~いのよ! ろくろ首みたいに!

 馬よりヤギより、分類的には妖怪変化の領域にしか見えない!

「双頭の馬は、古来より格式と栄誉の象徴なのだ。王族だけが所有を許されている」

「……」

「そうか。お前の世界に馬はいないのか」

 いや! いるから!

 馬はいるの! いないのは、頭をふたつ並べてこっちをガン見する、ヤギっぽい妖怪変化!
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