銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしを失いたくないと言ってくれた、あなたの元に戻りたい!

 戻るまで、あなたにひと目会うまでは……

「絶対に死ぬわけにはいかない!!」

 目から涙がほとばしり、口からは叫びがほとばしる。

 そして心からは、熱い感情がほとばしった。

 ジン! ジン! ジン!

「ジン―――――ッ!」

―― スウッ……。

 不意に、あたしの叫びに反応するかのように、張りつめていた空気が和らいだ。

 まるで、聞き分けてくれたかのように唸りが消え、揺れていた石柱が徐々に静まり、振動が治まっていく。

 そして、ついにピタリと動きは止まってしまった。

 し―――んと、沈黙が流れる。

 誰も動かないし、何もしゃべらない。

 突然の変化に誰もついていけず、キョトンとして棒の様に突っ立っているだけだ。

 ブルル……と双頭の馬達が長い首を振り、溜め息のように大きな息を吐く。

 その音のお陰で、全員の緊張の糸が緩んだ。

 護衛の兵士達が、当惑した表情でお互いの顔を見合い、ヴァニスが無言で剣を鞘に収める。

 あたしは頬の涙を手で拭い、ひとまず安堵した。

 どうやら、助かったみたい。

 なにがどうしてどうなってるのか、まったくもって分からないけれど、とりあえず今あたしは生きている。

 もうそれでいい。それだけで充分だ。

「違ったか……」

 誰にも聞こえないような、小さな声。

 見ればヴァニスが口元に手を添え、何かを考え込んでいた。
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