銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
人間の目線
町中に戻ると、ひと目ヴァニスの姿を見ようと熱狂する民衆が馬車に押し寄せてきた。
手を振り応えるヴァニスと、ますます大喜びする民衆。
城下町を抜けて吊り橋を渡り、馬車が門をくぐった時には、あたしはグッタリ疲れて凹んでしまった。
あの歓声、キッツイわ。
自分がまったくの孤立無援のような気がして、ただでさえ気分が沈んでる時に、更なるストレス要因。激しく落ち込んでしまう。
あ~、乗り心地の悪い馬車に揺られて、体中ギシギシ痛むし。
重い足を引きずり、あたしはヴァニスの後に続いてノロノロと城内へ入った。
「お兄様!!」
鈴の音のような、軽やかな声が聞こえた。
赤い絨毯が敷かれた通路の向こうから、ひとりの少女がこちらに向かって勢いよく駆けてくる。
「姫様! 駆けては危のうございます!」
侍女らしき女性がドレスの裾をつまみながら、慌てて少女の後から追いかけてきた。
……姫様?
年の頃は、十代半ばくらいだろうか。
ヴァニスと同じ、揺るやかなウェーブの長い黒髪に、花の形の金色の髪飾りが良く映えている。
頬の色と同じ、ほんのりピンクに染まったドレスは、艶やかな生地全体に繊細なレースが贅沢に使われている。
でも品質の高級さと、デザインの上品さのお陰で、嫌味さは感じない。
胸元には細かな色とりどりの宝石が、これでもかと縫いこまれていた。
「お帰りなさいませ! お兄様!」
「いま帰ったよ、マティルダ」
マティルダと呼ばれた少女は、ヴァニスに飛び付かんばかりに抱きついてきた。
ヴァニスはにこやかに微笑み、少女の背中を優しく撫でる。
なに? この子、ヴァニスの妹なの?
手を振り応えるヴァニスと、ますます大喜びする民衆。
城下町を抜けて吊り橋を渡り、馬車が門をくぐった時には、あたしはグッタリ疲れて凹んでしまった。
あの歓声、キッツイわ。
自分がまったくの孤立無援のような気がして、ただでさえ気分が沈んでる時に、更なるストレス要因。激しく落ち込んでしまう。
あ~、乗り心地の悪い馬車に揺られて、体中ギシギシ痛むし。
重い足を引きずり、あたしはヴァニスの後に続いてノロノロと城内へ入った。
「お兄様!!」
鈴の音のような、軽やかな声が聞こえた。
赤い絨毯が敷かれた通路の向こうから、ひとりの少女がこちらに向かって勢いよく駆けてくる。
「姫様! 駆けては危のうございます!」
侍女らしき女性がドレスの裾をつまみながら、慌てて少女の後から追いかけてきた。
……姫様?
年の頃は、十代半ばくらいだろうか。
ヴァニスと同じ、揺るやかなウェーブの長い黒髪に、花の形の金色の髪飾りが良く映えている。
頬の色と同じ、ほんのりピンクに染まったドレスは、艶やかな生地全体に繊細なレースが贅沢に使われている。
でも品質の高級さと、デザインの上品さのお陰で、嫌味さは感じない。
胸元には細かな色とりどりの宝石が、これでもかと縫いこまれていた。
「お帰りなさいませ! お兄様!」
「いま帰ったよ、マティルダ」
マティルダと呼ばれた少女は、ヴァニスに飛び付かんばかりに抱きついてきた。
ヴァニスはにこやかに微笑み、少女の背中を優しく撫でる。
なに? この子、ヴァニスの妹なの?