銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 それからすぐに小部屋に案内され、しばらく待たされる。

 やがて侍女達が数人、タライや、新しいドレスを手に抱えて入って来て、寄ってたかってあたしのドレスを脱がせ始めた。

「ちょ、ちょっと?」

「お静かになさいませ」

「自分でできるから!」

「お気遣いは無用です。万事おまかせを」

 いや、別にあなたを気遣ってるわけじゃなくて。

 あたしが、見知らぬ人間に裸を見られるのが恥ずかしいのよ。

 体を拭けばいいんでしょ? それくらい自分でやるから。

 抵抗したけど、あっという間に全裸にされてしまった。

 もうっ、ここの人間ってみんな人の話を聞かないタイプなのね。民族性かしら。

 慌てて両腕で体を隠していると、侍女のひとりがタライを持ってきて、あたしの足元に置いた。

 そしてタライの底をトントンと手で叩いて、「湯を」とひと言。

 すると、底からみるみると湯気の立つお湯が勝手に湧き出してきた。

 おお、すごい。どういう仕組み?

 目を見張っていると、侍女達が布を湯に浸して絞り、あたしの全身を隈なく拭き始める。

 体に触れられる恥ずかしさもあって、あたしは侍女のひとりに話しかけた。

「ねぇ、どうして勝手にお湯が湧いたのかしら?」

「精霊の力を利用しております」

「精霊の力? じゃあ、この近くに精霊がいるってこと?」

 ……しめた! 誰かとコッソリ話すことは出来ないかしら!?

 そしたら外のジン達に連絡を付けられる!
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