銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
以前、あたしの住んでる地域が停電して断水した時、本当に大変な思いをした。
生活用水を運ぶのも、お湯を沸かすのもひと苦労。
夜はロウソクの灯りだけが頼りだし、冷蔵庫は使えないし、洗濯もままならないし。
元の生活に戻ったとき、心底ホッとして嬉しかった。
あの不便に感じた生活よりも、さらに労力の必要な暮らしをしていたのよね。この世界の住人達は。
それが劇的に変化したんだ。
あの時のあたしの嬉しさなんて、もう比較にならないほどの喜びだろう。
でもそのために精霊達が犠牲になっているのに、この自慢そうな様子からして、まったく無自覚みたいね。
この世界の人間達ってずいぶん自分勝手だわ。ジンが人間を嫌うのも無理ない。
普通だったら『申し訳ない』とか、『いまの生活は間違ってるんじゃないか』とか考え……
「お客様は異世界からいらしたって本当ですか?」
「え?」
「城中の噂ですよぉ」
好奇心丸出しの侍女の表情。
やっぱり噂になってたのか。そうだろうとは思っていたけど。
「お客様の住んでた世界って、どんな風なんですかぁ?」
「どんなって聞かれても……」
「こっちみたいに、精霊の力を利用できないんでしょう? さぞかし不便でしょうねぇ。お気の毒に」
「……」
「こっちに来て本当に驚いたでしょう!? 豊かで便利な国で!」
いかにも誇らしげな声に、なんだかムッときてしまった。
生活用水を運ぶのも、お湯を沸かすのもひと苦労。
夜はロウソクの灯りだけが頼りだし、冷蔵庫は使えないし、洗濯もままならないし。
元の生活に戻ったとき、心底ホッとして嬉しかった。
あの不便に感じた生活よりも、さらに労力の必要な暮らしをしていたのよね。この世界の住人達は。
それが劇的に変化したんだ。
あの時のあたしの嬉しさなんて、もう比較にならないほどの喜びだろう。
でもそのために精霊達が犠牲になっているのに、この自慢そうな様子からして、まったく無自覚みたいね。
この世界の人間達ってずいぶん自分勝手だわ。ジンが人間を嫌うのも無理ない。
普通だったら『申し訳ない』とか、『いまの生活は間違ってるんじゃないか』とか考え……
「お客様は異世界からいらしたって本当ですか?」
「え?」
「城中の噂ですよぉ」
好奇心丸出しの侍女の表情。
やっぱり噂になってたのか。そうだろうとは思っていたけど。
「お客様の住んでた世界って、どんな風なんですかぁ?」
「どんなって聞かれても……」
「こっちみたいに、精霊の力を利用できないんでしょう? さぞかし不便でしょうねぇ。お気の毒に」
「……」
「こっちに来て本当に驚いたでしょう!? 豊かで便利な国で!」
いかにも誇らしげな声に、なんだかムッときてしまった。