銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
　どこまでも美しく澄んだ水色の瞳。
　命の尽きるこの瞬間に、あなたは信じている。

　あたしを。
　出会ったばかりの、このあたしを。
　そして、道行く先の希望を信じているのね。

　あなたは……
　その希望を見ることなく、ここで死に絶えるというのに……。

　あたしの両目に涙が盛り上がり、雫となってポタリと零れる。

　それが精霊の透けた頬に落ちて、小さな王冠のような波を形作った。

　……その時、水の精霊の全身が、まばゆいほどに光り輝いた。

「う……わ……！？」

　目を開けていられないほどの眩しい輝きが、あたしの全身を包み込む。

　足の爪先から頭の天辺まで、ザアァと音を立てて潮が満ちた。

　体中の水分という水分が、躍動するように反応している。

　水が……。あぁ、頭の中に、膨大な量の水のイメージが流れる……。

　逆らうことのできない圧倒的な力に翻弄され、あたしは呆然と、流れ行く水のイメージを心の中で見続けた。

　海も、河も、湖も、

　滝も、水溜りも、降る雨も、

　落ち、弾け、流れ、留まり、

　そして昇り、また巡る。巡り続ける。

　あれは、透明？　青？　翠？

　水　水　みず……。

　命の、雫（しずく）……。

　そう、雫。
　それはあたしがこの世に生まれる前から……

　あたしの為に、定められていた名前……。
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