銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 水も、火も、風も、土も、何もかも。

 それらは元々、人の為に存在しているわけじゃない。

 だから人間の都合で、自然をどうこう論ずる事はできない。

 自然とは、そもそもがそういう存在。天災も全てひっくるめて『自然』であり、世界なんだと思う。

 だから、自分達が大変だからって、精霊達を奴隷のように扱き使って良いって理屈は無いはずだ。

 はずだけれど……。

 それでもあたしは、ここで『みんな間違ってる』とは宣言できない。

 だってそれは、

『天災でどんな悲惨な目に遭っても、あんた達は黙って我慢するべきなんだ』

 って宣言するのと同じだから。

 大切な家族や、家や、財産を失う。

 でも誰にも文句を言う事ができない。

 ただじっと堪え、辛抱し、再び必死に大切な物を築き上げては、またあっという間に根こそぎ奪われていく。

 何度やってもその繰り返し。

 それを、当然なんだから受け入れろなんて言えない。

 ……人間が、精霊の力を利用する。

 それは単に、便利だって軽い次元の問題だけじゃなかった。ここの人達にとっては死活問題だったんだわ。
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