銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
風の精霊
―― ゴオォォォ・・・!
その時、一陣の強い風が吹き、あたしの周囲の砂を勢い良く巻き上げた。
「きゃ……!?」
悲鳴をあげながら両腕で顔をガードして、なんとか砂埃から身を守ろうとしたけれど、防ぎ切れない砂が鼻や唇の隙間から入り込み、あたしは派手にむせた。
うえ! ま、また砂が目に入った!
いててて! げほっ!ゲホッ!
ゲホゲホ咳き込みながら、薄っすらと目を開けて状況を確認すると、いつの間にか目の前に銀色の男が立っていて、じっと空を見上げている。
銀の髪。銀の瞳。
いや、これは銀色というよりも……
ムーンストーンに、微粒子の銀の粉を混ぜたような、そんな不思議な淡い輝きだ。
突如として現れたその銀色の男は、輝く髪を風に靡かせ、物悲しそうに無言で立っている。
両手を天に向けた、何かを悼むその切ない仕草と表情を見て、あたしは思い至った。
これが風の精霊? 水の精霊が言っていた、はぐれた仲間?
もしかしたら、仲間の精霊の死を悼んでいるの?
やっぱり……精霊にとっても命は大切なんだ。
そうよね。だってこの世にたったひとつしか無いものだもの。
世界は違えど、その価値は決して変わらないものなんだ。
でもあの水の精霊は毅然とした態度だった。
自身の命の終焉を悲しんではいたけれど、取り乱してはいなかった。
なぜなら、彼女には崇高な使命感と希望があったから。
仲間を救いたい。その一心。
そして、その気高い希望を託されたのはあたしと、この銀色の男……?
銀色の精霊が、まるであたしの思考に反応したかのように振り向いた。