銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 動悸はますます激しくなって、息が苦しくてたまらない。

 イフリートを襲った時と違って、今回は完全に力が暴走してしまっている。

 色々な事柄が複雑すぎて、心がついていけてない。

『ガアアァァ――――!!』

 苦しむあたしの耳に、聞き覚えのある咆哮が響いた。

 この声は、イフリート!?

 ジンを救うべく、紅蓮の髪を燃え上がらせたイフリートが、悪鬼のような表情で仁王立ちをしていた。

 炎の塊が、雨あられのように風の精霊達に降り注ぐ。

 水の攻撃と、炎の攻撃に同時に襲い掛かられて、風の精霊達はもう完全にパニック状態だ。

「ひっ……う、ぅ……」

 さっきの女の子が、地面を這いずりながらこちらに向かってきた。

 涙でぐちゃぐちゃの顔は引き攣り、目の焦点は朧だ。

 この極限状態で、訳も分からないままに、力を振り絞ってあたしに救いを求めている。

 あたしも懸命に自分の体を引きずって、女の子の元へ近寄った。

 その時、恐慌状態になっていた風の精霊のひとりが、突風を巻き起こした。

 体が地面から浮き上がりそうな突風に息を止め、あたしは土にしがみ付いて懸命に耐える。

 強烈な風に大きな瓦礫が巻き上げられ、グルグル回転しながら、女の子に向かって一直線に降って来た。

「危ない―――!」

 あたしは、飛びかかる様にして女の子の体に覆い被さった。

―― ガッ……!

 頭に強い衝撃を受けて、目の前にパッと赤い飛沫が飛ぶ。

 ……これって、血飛沫? あたしの?

 空と地上がグラリと回って、あたしの体は地面に倒れた。

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