銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 頭、キュウッと絞られるみたいに辛い~。

 目の前、暗い。四肢が痺れて、ものすごく重く感じる。これって貧血かしら。

「女の子? お兄様が連れて来た女の子なら、あの後すぐに衛兵が家に送って行ったわ」

 そうなんだ。じゃあ、ちゃんと保護されたのね?

 良かった。あのまま置き去りにされたのかと思ったわ。

「まさか精霊があんな反乱を起こすなんて、驚いたわ! 本当に酷いわ!」

 マティルダちゃんが怒り出し、周りの侍女たちもこぞって同意した。

「まったくでございますよ! 建物の被害も怪我人も大勢出たようでございますからねぇ!」

「被害者達は、今頃大変な思いをしてますよ」

「しょせん血も涙も無い生き物なんですよ。精霊なんて」

「あんな恐ろしい事を平気でやるんですからね!」

 精霊達をあしざまに罵る言葉が、心に突き刺さる。

 そんな酷いこと言わないで。ジンは恐ろしい精霊なんかじゃないわ。

 優しくて仲間思いの、とても美しい精霊なのよ……。

「精霊って恐ろしい存在なのね」

「そうでございますよマティルダ様。ゆめゆめ精霊などに心を許してはなりませんよ!」

「ええ。本当にそうね」

「そういえば精霊達が、破壊された町を復興し始めたらしいですわ」

「当然ですわ! 自分達の仕出かした責任なんですからねぇ!」

「しっかり働いて、きっちり罪滅ぼしをしてもらわなきゃなりませんわ!」
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