銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ちょっと、ヴァニス……。

 確かに事実だけど、もうちょっと言い方ってもんがあるでしょうが!

「雫さま、死なない? 本当に死なない?」

「え、ええ、死なないわ」

「ある日突然、ポックリしない?」

「しないわよ」

 だからその、『ポックリ』ってのヤメて。

 なんか、不吉な予感がヒタヒタと忍び寄ってくるんだってば。

「死ぬ日を覚悟して迎えるのも嫌だけど、ある日突然ポックリも、マティルダすごく嫌だわ!」

「ポックリもパックリもしないってば!」

「雫さまぁ……お願い死んじゃいやぁ……」

「だから、こっちは死ぬつもりも予定もないって全然!」

 お願いだから怪我人の前で、深刻な顔して死ぬ死ぬ連呼しないで!

 まったくほんとに、この兄弟ときたらもう!

「ヴァニス王様も、大層ご心配のご様子でしたからねぇ」

 マティルダちゃんの大げさな心配ぶりに、侍女たちも苦笑いしている。

「おかげで、余計に姫様の不安が増長されてしまって」

「心配? ヴァニスがあたしの事を?」

「はい。執務をなさりながら何度も、『雫はまだ目覚めぬのか?』と様子を見にきておられました」

 ヴァニスが何度も……。

 そうか、あたしの事を心配してくれたんだ。

「ちょ、ちょっと雫様!? 何をなさってるんですか!?」

「ヴァニスの所へ行くわ」

「雫さま!? まだ起き上がってはだめよ!」

 ベッドから降りようとするあたしを、みんな揃って押し留める。

 その気持ちはありがたいけど、あたしはヴァニスと話さなきゃならない。
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