銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 初めて城に来た時は、異国風でアンティークな建築やインテリアが珍しかったけど、人間って割とすぐ環境に順応するのね。もう見慣れたわ。

 自然の物を多用しているから、馴染みやすいのかもしれない。

 侍女もマティルダちゃんの所へ帰してしまったから、部屋にはあたしひとりきり。

 だって付いていてもらっても、基本、すること無いし。

 枕もとの横のイスに座って、ひたすらジーッと顔を見られていても、お互いストレスが溜まるばかりで。

『何か変化があったら呼び鈴を鳴らしましょう』

 って事で合意の上、侍女さんには通常業務に戻ってもらった。

 一応、頭の怪我が心配だからおとなしく寝てたけど、じっと横になってるだけってのも辛い。

 本でも読めればいいんだろうけど、文字が読めないだろうしなぁ。

 どうやら異常も悪化もないようだし、起き上がっても……いいわよね? ポックリいかないわよね?

 あたしはソロソロと身を起こし、自分の体の具合を確かめてみた。

 うん、大丈夫。関節の痛みも無いし、眩暈もしない。

 貧血なんて、夕飯に肉でも食えばすぐ回復するわ。平気よ。

 ……肉、か。

 あたしも、他種族の命を犠牲にして生きているのね。

 もちろんそれを、下劣な行為と決め付ける事はできないけれど。
< 293 / 618 >

この作品をシェア

pagetop