銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
こちらに背を向けてサッサと歩き出そうとした風の精霊に、あたしは怒鳴りつけた。

 さっきから何なのよいったい! もう我慢できない!

 出来損ないだの、まがい物だの、ただの人間だの半人間だの、無礼千万なセリフの展覧会じゃないの!

 水の精霊はあんなに礼節を持っていたのに、この違いはなんなの!?

「言っとくけど、あたしは被害者なのよ被害者! せめてそれに相応しい礼儀をわきまえなさいよ! いったい誰のせいで、あたしが半人間になったと思ってるの!?」

「少なくともオレのせいじゃないさ」

 風の精霊は、チラリと冷めた視線を投げて寄こした。

 興奮しているあたしを見て、「ふんっ」と顔を背けるその、こ憎ったらし~い態度にあたしはますます頭にきた。

「あんたを砂漠超えさせるために、あたしが犠牲になったんじゃないの!」

「ふん。それは違うね」

「なにが違うってえ!?」

「水の力が無ければ、お前だってここで死ぬんだ。それのどこがオレの為の犠牲なんだ?」

「うっ……そ、それは、そうだけど……」

「それに、水の精霊の呼びかけに応じたのはお前自身だろ?」

「別に望んで応じたわけじゃないわよ!」

「いいや違うね。お前は望んだんだ」

「望んでないったら! あたしは無理やりここへ……!」

「本人の意思がなければ、弱った精霊ひとりの力で、世界間の移動なんて可能なわけがないだろ? ……お前、もしかして嫌気がさしてたんじゃないのか? 自分が元居た世界に」

「……!」

 あたしは言葉を詰まらせた。

 確かに、あの時あの瞬間、あたしは嫌気どころか世界に別れを告げようとしていた。

 まさかそれが原因?
 あたしがこの世界に来てしまったのは、あの世界に絶望したから?

 だから別世界への扉が開いてしまった? 全部、自業自得ってことなの?
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