銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「そ、それがどうして人間の命でなきゃならないの!?」

 米でも塩でもいいじゃないの!
 魚や馬や牛じゃダメなの!?

「救いを求めているのは人間だぞ? 自分達の願いを叶える為に、他種族の命を犠牲にするのか?」

「そ、それは……」

「そちらの世界ではそうかも知れぬ。だがこちらの摂理は違うのだ」

「そもそも、何で命なの!?」

 なんで!? どうして!?

 別に命まで奪うこと無いじゃないのよ! 他に方法あるでしょう!?

 舞いを納めるとか! 音楽を捧げるとか!

 お賽銭をあげるとか、神殿掃除の御奉仕、と、か……。

 ……。

 それで叶えてもらえる程度の願いなら、誰も苦労はしない。

 そういう事だ。

 大きなものを手に入れたければ、払う代償も当然大きくなる。

 寝ていて金メダルは取れないし、ノーベル賞も手に入らない。

「神様なのに……」

 あたしはガクリと肩を落とし、ポツリと呟いた。

 神様なのに。偉大なる神なのに。

 なのに、奇蹟を起こしてはくれないの?

「何度も言ったはずだ。神だ精霊だからといって、特別でも偉大でもない」

「……」

「その意味が分かったか?」


 分かった。ようやく意味が分かった。……痛いほど。
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