銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 今までのあたしに対する空気が、ガラリと変わってしまったのをひしひし感じる。

 あたしは猛烈に焦りだし、部屋の中をウロウロ歩き回った。

 あぁ、どうしよう! 着々と外堀が埋められてる!

 なんだかもう、生き埋め寸前な気がしてきた!

 どうしようどうしよう。こんなの予定になかったわ。

 そもそも世界の一大事って時に、御手付き云々言ってる場合じゃないでしょうに!

 なんだってこう次から次へと、芋ズル式に問題が発生するんだろう?

 しかもみんな揃って悪化の一途を辿ってるし!

 ……。

 ジンに会いたい。

 切実に、痛烈にそう思った。

 あたしひとりじゃ不安なのよ。

 たったひとりじゃ戦えない。世界相手に太刀打ちできないわ。

 ジンなら、きっとあたしの話を聞いてくれる。

 種族の垣根を越える事が、結果的に種族を救うカギになると分かってくれるはずだわ。

 だってあたし達の……あたしとジンの心は繋がっているんだもの!

 そのためにも、一刻も早くジンに会わなくちゃ。明日になったらこの城を出て、ジン達に会いに行こう!

 でも、そう決意した途端にあたしは不安になった。

 城……出してくれるわよね?

 まさかあたしもアグアさんやノームみたいに、幽閉されたりしないわよね?

 だ、大丈夫、なはず。

 だって一応、あたしに対しては何の罪状も無いんだし。

 そのあたしを幽閉する権利は、たとえ国王にだって無いもの。

 大丈夫よね? 明日になれば、あたしはこの城を出られるわよね?

 ひとりぼっちの部屋で、あたしは両手をギュッと握り締めて、不安を押しやった。

 明日、明日になれば、きっと……。


 そして…………

 翌日、あたしの不安は全て現実のものとなった。
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