銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 どうにも手の打ちようが無いまま、イライラと日数だけが過ぎていく。

 やがて城内の雰囲気がざわめき始め、侍女達の動きが慌ただしくなってきた。

『寝所の用意』とか『新しい寝間着の用意』とかの会話の内容で、ピンときた。

 ヴァニスが言ってた『次回』の準備だわ! 相応の手順ってやつを整えているんだ!

 どうしよう! このままじゃ順当に御手付きコースまっしぐらだわ!

 もういっそヴァニスに暴露しようか!

 あたし実はキスどころか、アッチの方もすでに回数こなしてますからって!

 ……。

 どんな目で見られるか、想像するだけで恐ろしい……。

 でもそれくらい強烈な打撃を食らわさないと、ヴァニスの幻想は粉砕できない気がする。

 困ったわ。本当にどうしよう。

 窓辺に頬杖をつき、夜空を見上げて深い溜め息を何度もついていたら……。

『……さん』

 ……ん? 何か聞こえた?

 キョロキョロと辺りを見渡すと、また何かが聞こえてくる。

『……さん、……さん』

 なにか、小さな小さな音が聞こえる?

 なに? どこから聞こえるの? 音が小さすぎて分からない。

『……さん、しずくさん』

 ……!?
 この声は!?

『しずくさん、聞こえますか? わたしです、ノームです!』

 ノーム!!
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