銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「どこ!? どこにいるのノーム!?」

 あたしは夢中で叫んで、慌てて口を手で覆った。

 大声出したら、扉の向こうで張ってる侍女に気付かれる!

『あぁよかった! やっと気づいてもらえましたぁ!』

 半べそかいてるような声に、あたしはひそひそと答えた。

「ノームどこ? 姿を見せて」

『わたしは、しずくさんのいる部屋にはいません。幽閉されていますから』

「え? じゃあどうして声が聞こえるの?」

『その子の……その花の力をかりて、声だけをとどけているんです』

「花? あ……」

 あたしは、窓辺に飾られている花を見た。

 あの襲撃の時の女の子が、「助けてくれたお礼に」って花束を届けてくれた。

 それを侍女に頼んで飾ってもらっていたんだ。

『切り花になっては、命はながくありません。その子の最期の力です』

「そ、そうなの?」

『間に合ってほんとうによかった!』

 確かに、花瓶の花から声が聞こえてくる。

 最期の力を振り絞っている花自身の声のように聞こえて、あたしは心から感謝した。

 ありがとうお花さん! あなたのお陰よ! 本当にありがとう!

「ノーム無事なの? 大丈夫? 今どこにいるの?」

『わたしは……の、奥のへやに……』

「ノーム? どうしたの? よく聞こえないわ」

『たぶんもう……時間……無……』

「ノーム、聞こえないのよ」

『この花を持って、わたしの声がきこえる方角へすすんでくだ……』

 そこでピタリと声が止んでしまった。

 わあぁ―! お願いお花さんしっかりして! あなただけが頼りなの!
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