銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 こんなセクハラおやじ紛いな事したくないけど、背に腹は変えられない!

「またあんな事されたら、あたしきっとまた呼び鈴を鳴らしてしまうわ」

「そ、それはちょっと……」

「ひょっとして、ただ一緒に眠ればいいだけとは違うの? 教えて。あたし何をすればいいの? ヴァニスに何をされるの?」

 侍女は赤い顔と潤んだ目で、オロオロ視線を泳がせる。

 よし! もう一押し!

「ヴァニスは言ったの。できるだけ優しくするって」

「……」

「でも、初めての時はどうしても痛むって」

「……」

「衝撃を受けるだろうけど、力を抜いて耐えろとか」

「……」

「その際には、声を出してもかまわない。いやむしろ、出されたほうが燃え……」

「そ、その件に関しましては、侍女長より説明がございます!」

 侍女は両手で『ちょっと待った!』の意思表示をした。

「王のご寵愛を受ける婦人に作法を説明するのは、歴代侍女長の職務なんです!」

「まぁ、あのロッテンマイ……いえ侍女長が?」

「えぇ! 図解入りで準備万端、懇切丁寧、アフターケアも万全で!」

「まぁすごい」

「あの方はプロですから! 年季入ってますから! 私なんかより、よほど素晴らしい説明と手ほどきをして下さいます! 今呼んで参ります!」

「ぜひお願い」

「承知いたしました!」

 侍女は一礼して、わたわたと廊下を小走りに去って行く。

 その姿が見えなくなるまで見送り、あたしは急いで部屋に引き返す。

 そして花束を腕に抱え、侍女と反対の方向へ向かった。
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