銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「しずくさん! みんなが……」

「え?」

「みんなが、城に来ています!」

「みんな? みんなって…… あ!」

 あたしはガバッと上体を起こして叫んだ。

「ジンがこの城に来ているの!?」

 あたしは夢中でノームを両手にすくい上げ、問いただした。

「来てるの!? ジンが!? ここに!?」

「はい! ジンもモネグロスも、イフリートも!」

「何で分かるの!?」

「わたしに呼びかけてきています! 場所は、ええと、声が聞こえてくる場所は……」

「場所は!?」

「庭です! 庭の植物に頼んで、こっそりこちらに呼びかけてもらってるんですよ!」

 ジン――――!!

 あたしはノームを胸元に突っ込み、飛び上がるように立ち上がった。

 布団の山にタックルしながら突き進み、部屋を飛び出す。

 そして庭を目指して、無我夢中で通路を疾走した。

 ジンに会える! ジンに会えるんだわ!

 今すぐ行くわ! 待っててジン――!

「ノーム!」

「はい! しずくさん!」

「ところで中庭ってどっち!?」

「わたしもよく分かりません!」

 あたしはピタリとその場に立ち止まった。

 そして結局、さっきの花束みたいにノームをアチコチかざして、行ったり来たり廊下を迷い進む。

 お、お願いジン! ほんとに今すぐ行くから、ちょっとだけ待ってて~!!
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