銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「雫……雫、雫、雫……」

「ジン、会いたかったわ」

「オレもだ。ずっと雫に会いたかった」

 ジンがあたしの頬に優しく頬擦りした。

 その滑らかで軽やかな、不思議な感触にうっとりしてしまう。

「雫、心配したんだぞ。大丈夫だったか? 怪我は?」

「うん大丈夫よ……って、ジンこそ大丈夫だったの!?」

 あたしは慌てて頬を離して、まじまじとジンの全身を確認した。

 あの時大怪我してたでしょう!? あれからどうしたの!?

「お前が無事で良かった。おそらく精霊の長が、お前の怪我を治してくれたんだろう」

「ジンこそ満身創痍だったじゃないの!」

「オレは自前で治せるからな。風の治癒力がある」

 そう言って笑ったジンの顔には、複数の深い傷跡が残っていた。

 服もあちこちが破れたままで、そこから生々しい傷跡が覗いている。

 まだ全然完治して無いんだわ。無理も無い。あんなに手酷い攻撃を受けたんだもの。

 しかも、自分の仲間である風の精霊達から。

「雫、あの時助けてやれなくて済まなかった」

「ジン……」

「迎えに来るのに時間がかかった。本当に済まない。許してくれ」

 あたしは、目に涙をいっぱい溜めて首を横に振った。

 体も心もズタズタに傷付けられたジン。

 なのに、まだ傷も癒えていないのに、ここまで来てくれた。あたしのために……。

「不安だったろう? もう心配ない。オレがいる」

 ジンが優しく微笑んだ。

「二度とお前を放さない。離れない。雫」
< 346 / 618 >

この作品をシェア

pagetop