銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ムーンストーンに銀の微粒子が混じったような、不思議な色。

 この目を、この銀色を、どれほど見たかったことか。

 その銀色の瞳の奥に、涙混じりのあたしの笑顔が映っている。

 ジンが額を寄せてきて、こつん、とぶつかるふたりのおでこと、触れる鼻先。

 温もりとか、感触とか、あたし達は目を閉じ擦り寄せ合って、感じ合い、求め合う。

「雫……」

「ジン……」

 熱い溜め息のようにお互いの名を囁きあえば、胸が痛いくらいに切ない。

 押し潰されそうなほど苦しいのに、幸福感で張り裂けそうに膨らんでる。

 たまらない。感情が込み上げてきて押さえられない。

『愛しい』という感情が、もうあたしには押さえられない。

 あたしは、そっと唇をジンの唇に触れ合わせた。

 ぴくりとジンの体が反応する。

 ジン、知ってるかな?

 精霊はどうか分からないけど、人間の男女はね、こうやって愛情表現するんだよ?

 愛する相手に自分の唇を重ねて……こう……。

 目を閉じていても、ジンの動揺が伝わってくる。

 やっぱり初めてなんだ、キス。驚かせてごめんね。でも……。

 やがてジンの方からも唇を押し付けてきた。

 角度を変えて味わうように、何度もキスを交わすうちに、少しずつお互いの息が上がってくる。

 絡み合うように互いの体を包みあう腕と腕。

 ジンの口から、あたしの口から、甘い吐息が漏れる。

 もっと……もっと深く……。
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