銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしはパンパンと勢い良く両手を合わせて、かしわ手を打った。

 訝しげな風の精霊の視線を感じつつ目を瞑り、そして一心に祈り始める。

 お願い、助けて。
 今、あたし達は命の危機にさらされているの。
 どうか助けて。お願いだから力を貸して。

 懸命にあたしは祈る。
 頭の中は、そのことで一杯。
 砂漠に吹く風も、命を削り取る熱気も、精霊の銀色の視線も、もはや何も感じない。

 助けて欲しい。助かりたい。ただそれだけ。
 ひたすらに一途に、救われることを望んだ。

 水。水の仲間。助けて。
 助けて。お願い。助かりたいの。
 死にたくない。助かりたい。
 生きたい、生きたい、生きたい。

 あたしは、生きたい……。

―― ピチョン……。

 水滴が、ひと雫、落ちた。
 ……何処に?

 その疑問の答えを知る間もなく……

―― ザアァァァ!

 波紋が体中に走り、全身に潮が満ちる。

 あぁ、波紋が、波が、潮騒が……
 細胞が、血が、全ての水が……

 反応し、呼応している。
 呼び合い、手を取り合い、次々と目覚めていく。
 踊るように、息づくように。
 これはまさに……

 躍動。
 生命の躍動だ。

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