銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ジンと砂漠へ行ってもあたしは決して幸せにはなれない。

 それどころか罪の意識を一生背負い続ける事になる。

 後悔に責め苛まれる日々を送り、いつの日かジンを責めてしまうかもしれない。

 そしていずれ重みに耐え切れず潰される。

 どんなに泣いても喚いても、事態は引っくり返りはしないんだ。

 絶望と終焉は大岩のようにあたしを押し潰し、苦しみ続けるだけ。

 この先なにひとつ、あたしの希望は叶えられる事はないのよ……。

 あたしは、爪が食い込むほど強く手を握りしめ、唇を噛み締める。

 涙が次々と頬を流れて顎から落ちて、グズグズと鼻を啜る音だけが、だらしなく響いた。

 好きなのに。ジンの事を愛しているのに。

 あたしは、行けない。一緒には行けない。

 その事をジンは、誰よりもよく理解している。

 ジンは、分かってくれないわけじゃなかった。

 分かりすぎるくらい分かっているんだ。だからこそ彼は受け入れられなかった。

 そう、誰が悪いわけでもない。

 これは、しかたがないことなのね……。
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