銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「イフリート……」

 イフリートの肩に座っているノームが、その耳元に囁いていた。

「なにか? ノームよ」

「わたし、行きます。わたしも、しずくさんといっしょに行きます」

 あたしは思わず目を見張った。

 ノーム? 何言ってるの? どういう事?

「ここでしずくさんと別れたくないんです。そんなことしたら、わたしぜったい後悔しますから」

「……そうか」

「だから決めました。わたし、行きます」

「承知」

 モネグロスを抱きかかえたイフリートが近づいてきて、あたしの真正面に立つ。

 ノームが、あたしに向かって小さな両手を伸ばした。

「しずくさん」

「あ……」

 あたしはオロオロと、ノームとイフリートの顔を見比べる。

 ノームに再び促され、言われるまま手を伸ばしてノームを受け取った。

 イフリートとノームは、しっかりと見詰め合う。

「ノームよ、我は知っている。自分自身に言い訳は通用せぬ事を」

「はい」

「だから、我は理解する。お前が望む道を」

「イフリート……」

「ノーム。お前は真に誇り高き土の精霊なり」

 イフリートの温かな微笑みがノームに向けられ、そしてそれがあたしにも向けられた。

「雫よ、ノームを頼む」

「イフリート、でも……」
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