銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしは目を見開き、体内に湧き起る生命の躍動感に思わず息をのんだ。

 あぁ、あたしは、こんなにもざわめいて、そして波打っている。
 ああぁ……あたしは……。

 突然、彼方に流れる天上の虹から、七色の光が噴水のように噴き出した。

 あたしの内部の躍動に惹かれたように光は渦を巻き、凄まじい勢いで、一直線にこちらへ向かって飛んで来る。

―― ドオォォォ!

 激しい水音と共に、七色の光が一気にあたしの足元に降り立って、あたしは思わず逃げ腰になって後ずさる。

 滝つぼに落ちる水煙のように虹の光が周囲に拡散し、空間が薄く煙って色づいた。

 そしてその七色の光は、黄色い砂の大地にみるみる飲み込まれていく。

 立ち上る砂煙。輝く周囲。
 ようやく収まって視界が開けて、呆然と見上げるあたしの目に映るのは……。

 虹の滝の架け橋。
 遥か砂漠の彼方に向かって、緩やかに弧を描く、七色の鮮やかな虹の架け橋だ。

「成功……した?」

 虹の滝が、あたしの願いを聞き届けてくれたの……?

 嬉しいというよりも、とにかく驚愕してしまって、息して立ってるだけで精一杯。

 成功しちゃって、逆にどうすればいいのか分からない。

 やっぱりあたしの中には、水の精霊の力が宿っているんだわ。

 自分の中の得体の知れない力をようやく実感して、微かな恐怖を感じた。
 あたし、これからいったいどうなってしまうの?
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