銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
ほころび
あれから数日経って……
あたしは城内の自室で、ぼんやりと窓辺に座って外を眺めていた。
窓辺に飾られた鉢植えの花に、ノームが土の精霊特有の言葉で楽しそうに話しかけている。
あたしがもう、逃げも隠れも騒ぎもしないと知って、ヴァニスはノームと一緒に居る事を許してくれた。
花との会話を楽しんでいるノームを見ながら、ここに残る事を望んでくれた彼女の優しさにしみじみ感謝する。
本心ではイフリートと一緒に居たかったろうに、その恋心を押しやってまであたしへの友情を貫いてくれた。
こんなに小さく可憐で華奢な精霊だけど、その芯はまるで大木のように大きくて太い。
でも、この先どんな事態になろうと、この子だけは何とか砂漠へ無事に帰さなきゃならないわ。
あたしや人間の命運に付き合う義理は無いんだもの。
ノームの優しい気持ちだけでもう充分あたしは癒されたんだから。
……でも、何度そう説得してもノームは首を縦に振らなかった。
『わたし、しずくさんとずっと一緒にいます』
頑強にそう言い張って、決して城を出ようとしない。
この子、意外に頑固なのよね。まいったな。どうやって城から出そうか。うーん……。
そんな風に考える事が、今のあたしの毎日の支えになっている。
目的があるって、やっぱりいいわ。張り合いがあるもの。
あれからあたしが抜け殻になってしまわずに済んだのは、この子のお陰だわ。
ジンと別れた、あの夜。
あたしはすぐさまヴァニスに告げた。
『このままの状態を続けていては、人間はいずれ滅びる。今からでも遅くないから、元の生活に戻ろう』
涙の乾き切らない顔で真剣に訴えるあたしの言葉を、ヴァニスは一笑に付した。
『雫よ、余がその事について何も策を講じぬ愚かな王と思うか?』
あたしは城内の自室で、ぼんやりと窓辺に座って外を眺めていた。
窓辺に飾られた鉢植えの花に、ノームが土の精霊特有の言葉で楽しそうに話しかけている。
あたしがもう、逃げも隠れも騒ぎもしないと知って、ヴァニスはノームと一緒に居る事を許してくれた。
花との会話を楽しんでいるノームを見ながら、ここに残る事を望んでくれた彼女の優しさにしみじみ感謝する。
本心ではイフリートと一緒に居たかったろうに、その恋心を押しやってまであたしへの友情を貫いてくれた。
こんなに小さく可憐で華奢な精霊だけど、その芯はまるで大木のように大きくて太い。
でも、この先どんな事態になろうと、この子だけは何とか砂漠へ無事に帰さなきゃならないわ。
あたしや人間の命運に付き合う義理は無いんだもの。
ノームの優しい気持ちだけでもう充分あたしは癒されたんだから。
……でも、何度そう説得してもノームは首を縦に振らなかった。
『わたし、しずくさんとずっと一緒にいます』
頑強にそう言い張って、決して城を出ようとしない。
この子、意外に頑固なのよね。まいったな。どうやって城から出そうか。うーん……。
そんな風に考える事が、今のあたしの毎日の支えになっている。
目的があるって、やっぱりいいわ。張り合いがあるもの。
あれからあたしが抜け殻になってしまわずに済んだのは、この子のお陰だわ。
ジンと別れた、あの夜。
あたしはすぐさまヴァニスに告げた。
『このままの状態を続けていては、人間はいずれ滅びる。今からでも遅くないから、元の生活に戻ろう』
涙の乾き切らない顔で真剣に訴えるあたしの言葉を、ヴァニスは一笑に付した。
『雫よ、余がその事について何も策を講じぬ愚かな王と思うか?』