銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「ねぇノーム」

「はい? どうしましたか?」

「精霊の長って、今どこにいるの?」

「長、ですか?」

 ノームは小首を傾げて考え込んだ。

 そしてしばらく、うーんうーんと唸ってから、肩を落とす。

「だめです。やっぱり気配をよみとれません」

「気配が読めない?」

 そうよねぇ。長たるもの、簡単に下っ端に気配を読み取られてちゃ、沽券に関わるってもんだわ。

「そうそう滅多に会えない偉大な存在なんでしょ? だから気配が読めないんでしょ?」

「いえ、単純に城の中にいないだけだとおもいます」

「あ、そ、そうなの?」

「長にはふつうに会えますよ? たぶん城下町にいるとおもいますけど」

 城下町か……。よし!

 あたしは廊下へ通じる扉を開けて、外に待機している侍女に話しかけた。

「ねぇ、お願いがあるんだけど」

「なんでしょうか?」

「城下町に行きたいの。ロッテンマイヤーさんに許可をもらえない?」

「承知しました」

 侍女は丁寧に頭を下げて離れていった。

 ノームを助けに行った時、侍女を丸め込んで部屋からトンズラしたのが侍女長にバレて、逆鱗に触れてしまった。

 以来、いちいち部屋から出る時は彼女の許可が要る。

 もちろん、侍女長の本名は『ロッテンマイヤー』じゃないんだけど、ついついあたしがそう呼ぶもんで、『ロッテンマイヤー』が侍女長の裏の通り名になってしまった。

 今ではほとんどの侍女が陰で彼女をそう呼んでいる。
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