銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ……死のう。
 そう思った。

 もういい。もうたくさんだ。

 障害のある恋に燃え上がって、盲目になってしまった彼も。

 表向きは謝罪しながら、自分が勝者である事を勝ち誇るあの子の手紙も。

 そっとしておいて欲しいのに、やれ弁護士だの慰謝料だのと騒ぎ立てる父親も。

『お母さんは最初からあの男は気に入らなかった』と、今さら言い出す母親も。

 同情する振りをして、人の不幸を楽しげに噂する同僚も。

 再三再四、メールや電話で状況を聞きたがる友人達も。


 最低だ。誰一人、本当はあたしの事を心から心配してなんかいない。
 あたしの傷も苦しみも、心から思い遣ってなんかいない。
 しょせん人の不幸は美味しいエサでしかないんだ。

 ……死んで復讐してやる。
 特に許すことのできないあのふたりに、あたしの死という現実を刻みつけてやる。

 一生消えない傷を背負わせてやる。
 絶対に幸せになんかさせない。
 自分達は人ひとりを死に追い詰めるほど傷つけた、最低のクズなんだと思い知るがいい。

 そのために、あたしの命がここで消滅してしまってもかまうものか。
 この復讐劇が人生最後にして、あたしの最大の華となるんだ。
< 4 / 618 >

この作品をシェア

pagetop