銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 しばらくして『護衛付きの馬車で、短時間なら』という条件付きでOKがでた。

 あたしはノームと一緒に、いそいそと部屋を出て外へ向かう。

 そして、例の双頭の妖怪馬の馬車に揺られて城下町へ向かった。

 馬車の中で、いつもの押し問答が始まる。

「ねえノーム、そろそろ砂漠へ行く気になった?」

「ならないです」

「じゃあせめて、土の精霊の仲間の所へ……」

「それもいやです。わたしはしずくさんと一緒にいます」

「強情ねぇ」

「しずくさんが砂漠へもどるなら、わたしも一緒に行きますけど」

「それは無理よ」

 今さらそんな、のこのこ砂漠へ戻れないわ。そもそも砂漠への帰り方も知らないし。

 あの砂漠は激烈に過酷な場所だから、無事に神殿まで辿り着ける保証も無い。

 砂漠に足を踏み入れた途端、番人の『はにわくん』に襲われたらひとたまりもないし。

 容赦なく人間に攻撃してくるもの。あのはにわくん。

「モネグロスは、できるだけ人間と距離をおくようにしてましたから」

「どうして? モネグロスは人間を寵愛してたでしょ?」

「だからです」

 砂漠の環境は苛酷。人間が生活するには不向き。

 つまり、それだけ人間との接触が少ない。

 だから人間は、砂漠の神であるモネグロスに対して、祈願する事柄も無い。

 祈願されなければ人身御供を受け取る事もない。

「だからモネグロスは、わざと砂漠に人間をちかづけないようにしてたんです」

「そうだったの……」

「彼はほんとうに優しい神ですから」
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