銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 そうね。優しくて純粋な神様よね。

 そうか、他の神と比べてまだ人間との接点が少なかったからこそ、今まで消滅を免れていたんだ。

 モネグロスは人間の命を奪っていなかったんだわ。良かった。

 ヘタレで頼りない、神とはとても思えないモネグロスだけど、あたしに向けられるあの笑顔は、翳りの無い真っ正直な笑顔だったんだわ。

 それが分かってやっぱり嬉しい。彼は今頃どうしているだろう? 無事に砂漠へ着いたかしら?

 そして……

 ジン、あなたは、どうしている?

 銀の髪と、銀の瞳を思い浮かべて、あたしの心は切ない想いで一杯になる。

 考えないようにしても、どうしても無意識に思ってしまう。

 そのたびに物悲しい苦しみに襲われるのに、彼を思う気持ちは止まらない。

 もう、どうしようもない事なのに。

 今どうしているだろう? 何をしているだろう? 何を考えているだろう?

 あたしの事、たまには思ってくれているだろうか。

 ジン……。

「雫様、城下のどちらへ向かいますか?」

「え? あ、あぁ、えぇと……ノームどう? 長は見つかった?」

「……いいえ」

「城下町に居るはずじゃなかった?」

「はい。城には気配が無かったので。でもどうやら行き違いになっちゃったみたいです」

 行き違いかぁ~。うまくタイミングが合わないわね。

 どうもまだツキは回ってきてないって事かしら。

 暗い溜め息をついて町を見回しながら、あたしは違和感を感じた。

 なんだろう? 何かが違う。以前来た時とは何かが違っているような気がするんだけど。
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