銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ジン達に破壊された町並みはすっかり元通りになって、道を往来する人達の姿も元気そうだ。

 なのに、何かこう、以前よりも何かが違う……。

 馬車を降りて周囲を見渡すと、言葉で表現できない違和感が増してきた。

 あたしの胸元から顔を覗かせたノームも、不思議そうにキョロキョロしている。

「しずくさん、なんだか静かですねぇ?」

 そうだ、それだわ!
 町中に活気が無いんだ! 全然!

 改めて見渡すと、お店が全然開かれていない。

 食料品店も、衣料品店も、他の店も何もかも、一軒も開いている店がない。

 あたしは護衛の兵士に聞いてみた。

「今日って、休息日か何かの日なの?」

「いいえ、そのような事はありません」

「じゃあ、何でこんなに町中が静かなの?」

「あっ!? しずくさまだあっ!!」

 明るい声と共に、街の襲撃の時に花束をくれた女の子が、数人の友だちと一緒にこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

 立ちはだかろうとした兵士を手で制して、子どもたちを笑顔で迎える。

「こんにちは。元気だった?」

「うんっ!」

「この前はお花をありがとうね。……ねぇ、ちょっと教えて欲しいんだけど」

「なぁに?」

「今日はお店がお休みの日なの?」

「今日だけじゃないよ。きのうもその前も、ずっとだよ」

「どうして?」

「もう、しなくてもいいんだって」

「? なにを?」

「おしごと。もう、しごとしなくてもいいんだってみんな言ってるよ」
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