銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「うちのお父さんとお母さん、なんだかケンカばっかりしてるの」

「うちもよくケンカしてる」

「うちもだよ。だから家にいるのイヤなの。お外で遊んでるほうがいいもん」

 子どもが自分の家に居たくないって、そんな……。

 これって絶対に良くない兆候だわ。ひょっとしてこれが人間の滅亡の兆しなんじゃないの?

 ヴァニスはこの状態を把握しているのかしら?

「せっかく、せいれいが新しくしてくれた、ピカピカの家なんだけどな~」

「でもうちのお母さん、ここが気に入らないあそこがダメだって、文句ばっかり言ってる」

「うちも。となりの家の方が、いい家になったって怒ってる」

「やっぱり家にいたくないよね」

「お腹すいたら、せいれいにめいれいすればいいんだもんね」

「ね――っ」

 屈託無く笑い合う子ども達の笑顔を見て、あたしは軽い寒気を覚えて、隣に立っている護衛の兵士に聞いてみた。

「どうなってるの? これで今まで何も国民に混乱は生じていないの?」

 兵士は困惑したように返答する。

「さぁ? わたくしは管轄外ですので」

「でも人間が働かなくなってるんでしょう? 問題が生じているはずよ?」

「さぁ?? でもそうなったら……」

「なったら?」

「担当者が処理すると思いますが?」

 だから!
 その担当者はちゃんと働いているのか?って聞いてるのに!

「ヴァニスは最近、城下を視察してるの?」

「いいえ。なにやら非常にお忙しいらしくて、最近はまったく」

 見ていないんだ。この現状を。
 下から報告は上がってこないんだろうか?
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